本年度は、ホーチミン市国家大学との共同研究により、ベトナムに植生する植物であるGarcinia vilersianaに着目した。この植物はベトナムにおいて伝統的薬用植物として用いられていることから、この植物中には生体防御に関わる薬効成分が含まれていることが予想できる。そこで本研究では、Garcinia vilersiana抽出物が、生体防御に関わる転写因子Nrf2を活性化させるか否かを明らかにすることを第一の目的とした。また、ベトナムにおける環境汚染物質のモデルとしてヒ素に着目し、無機ヒ素の細胞毒性に対する当該抽出物の有効性を調べることを第二の目的とした。まず、ベトナムの熱帯生物学研究所に赴き、本植物の抽出操作を行った。実験にはマクロファージ由来のRaw264.7細胞を使用した。その結果、本植物の樹皮由来の抽出物が無毒性レベル(0.625-2.5μg/ml)の曝露濃度において、濃度・時間依存的にNrf2の核内蓄積を引き起こすことを明らかにした。同条件下において、抗酸化剤応答配列(ARE)への結合活性およびAREの転写活性の増強が観察された。またNrf2の活性化に伴い、下流の抗酸化タンパク質であるヘムオキシゲナーゼ-1(HO-1)の発現誘導が生じた。これらの結果より、Garcinia vilersiana抽出物の薬効は、Nrf2/HO-1経路の活性化を介した生体防御能の上昇に起因している可能性が示唆された。一方、本抽出物は無機ヒ素の毒性に対して防御的な効果を示さなかった。以上の成果は現在投稿準備中である。
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