本研究では、タイ国研究者から供与されたタイ国産植物抽出物・精製成分の抗がん作用、食後過血糖改善作用(消化管二糖類分解酵素阻害作用)について解析することを目的としている。本年度は、以下の知見を得た。 1) コンケン大学より供与された植物抽出物6種、マヒドン大学より供与された植物抽出物3種、精製成分4種を用い、我々が樹立したパクリタキセル耐性肝がん細胞PR-HepG2のP-糖タンパク質(P-gp)機能に及ぼす影響について検討した。その結果、P-gp基質としてローダミン123あるいはパクリタキセルを用いた場合で必ずしも同一の結果ではなく、基質間で影響に差が見られた。 2) KP018臼(Aganosma marginata)は、パクリタキセルの取り込みを上昇させる濃度では細胞毒性が強く、耐性克服剤としてよりは抗がん剤としての有用性が示唆された。さらにKP018は、パクリタキセル感受性細胞、耐性細胞に対して同程度の細胞毒性を示し、P-gpの高発現による耐性化の影響を受けないことが示された。 3) AT80(Aganosma marginata)、MT80(Microcos tomentosa)は、パクリタキセルの取り込みを上昇させる30μg/mLでは毒性を示さず、パクリタキセルの殺細胞効果を増強したことから、抗がん剤多剤耐性克服剤として有用であることが示された。 4) KP008(Aganosma marginata)、MT80(Microcos tomentosa)は、検討したタイ国産植物抽出物の中で二糖類分解酵素阻害作用が強く、マルターゼ、スクラーゼ、トレハラーゼいずれに対しても阻害作用を示した。 これらの結果は、タイ植物が、がんや糖尿病(食後過血糖)の新規治療薬の探索ソースとして優れた可能性を持つことを示唆するものと考える。
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