研究概要 |
Simian virus 40(SV40)は,ポリオーマウイルス科に属する環状2重鎖のDNAウイルスである.これまで,脳腫瘍(髄膜腫),悪性中皮腫,非ホジキンリンパ腫の腫瘍組織中にウイルス遺伝子断片が検出されるという報告があり,腫瘍化に関連している可能性も指摘されている.本研究では,日本・アジアにおける分子疫学的調査を含め,SV40の腫瘍ウイルスとしての意義について検討することを目的とした. (1)資料収集:日本,韓国,中華民国の諸施設に資料収集について協力を要請する. (2)SV40の検出:SV40の検出:Manfredらの方法に準拠し(Cancer Res 65 : 2005), Primer PQ(5027-4911), Primer SV(4476-4372), PrimerN'K'(3106-2966)の三断片の増幅でSV40の有無を検討する. (3)DNAメチル化との関係:Toyookaらの報告(Oncogene 21 : 4340, 2002)によれば,SV40の感染を認める中皮腫細胞株では癌関連遺伝子のプロモター領域にメチル化が高率に生じている.この点についても検討する. (4)新たなポリオーマウイルス,メルケル細胞癌ポリオーマウイルス(merkel cell carcinoma polyoma virus, MCPyV)は皮膚のメルケル細胞癌に高率に検出され,腫瘍化に関わっている可能性が示唆されている(Feng et al. Science 319 : 1096, 2008).その存在についても検討を追加する.
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