研究概要 |
高度マラリア流行地にはマラリアに感染しても感染赤血球率が上昇せず、発熱等の症状が出ない無症候原虫保有者が存在している。これらの人々の血清中には赤血球期マラリア原虫の増殖を阻害する抗体が存在することが予想される。そこで本研究は、新規熱帯熱マラリア発病阻止ワクチン候補抗原のハイスループットスクリーニングに用いる流行地住民の血清を入手することを目的に、タイ国西部ミャンマーとの国境地帯にあるマラリア流行地を調査対象地域とし、一昨年度、昨年度と同様の下記の調査研究を継続実施した。 その結果、これまでに感染歴、感染原虫種、等詳細に解析できたヒト血清試料を、タイでは非常に希な、無症候感染者血清として22名分、その比較対照群として有症患者血清22名分を入手できた。次に、これらの血清を用いて、原虫抽出抗原、既知のマラリアワクチン候補タンパク質であるMSP1,AMA1等に対する抗体の保有状況をELISAにより解析した。その結果、これら既知のワクチン候補抗原は無症候感染者及び有症患者いずれに対しても同レベルの抗体を保有していることが明らかとなり、防御抗体の有無とは相関しなかった。しかし、これらの血清を用いてマラリアゲノムワイドなプロテインアレイをスクリーニングすることにより、新規ワクチン候補抗原の同定につながる研究の準備は完了した。なお、上記の個別情報はコンピュータに記録しデータベース化を行い、すべての記録はコード番号化され、個人の特定は出来ないようにしている。
|