研究課題
平成20年度は研究実施計画に従い、具体的には以下において成果の論文・学会報告を行った。1.フィリピンのマラリア流行地の原虫集団間の遺伝疫学解析フィリピンの流行地3島(パラワン島、ミンダナオ島、ルソン島)から、採取した92株を用い、前年度に引き続き、マイクロサテライトDNAの12座位を用いて、a)熱帯熱マラリア原虫集団の遺伝的多様性の算出、b)遺伝的な分化度の算出、c)連鎖不平衡の解析を行った。これらの遺伝的構造を(1)現地マラリアの流行度、(2)薬剤耐性マラリアの分布、(3)耐性遺伝子の多様性とその分布などと比較したところ、上記3集団は互いによく分化していて、薬剤耐性の分布と拡散に関しても個別の事象である可能性が示唆された。この成果に立脚すれば、フィリピンにおける一律な治療法や対策手法が、それぞれの患者や地域には最善でない可能性がでてくる。これは、薬剤耐性マラリアの拡散のメカニズムに追る生物学的な知見を与えるだけでなく、フィリピンにおけるマラリア対策政策への提言に繋がる成果である。2.三日熱マラリア原虫のミトコンドリアDNAを用いた分子系統解析近年、三日熱マラリアの薬剤耐性や重症化した症例が報告され大きな問題となっている。本年度は三日熱マラリア原虫の地理的起源の推定方法の確立を目的とし、国立国際医療センターの患者検体(東南アジア、南アジア、中東、南米)、並びに韓国の検体、合計17検体、さらにGenBankに登録されている他の地域のデータ(約140検体)を用いた結果、ミトコンドリアゲノム全領域を用いた分子系統解析が、流行地域ごとのクラスターを形成することが判明した。一般的に同ゲノムは地理的な遺伝的変異が多く、組換えを行わないと言われるが、本原虫種においても同ゲノムが有効な分子マーカーとなることが明らかとなった。当該分子系統解析は、原虫の地理的起源を推定でき、患者の治療方針や流行拡散の把握に有用であると考えられた。
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http://www.imcj.go.jp/rese/appr/riappr/web-content/index.html