研究概要 |
今年度は以下の3点の結果が得られた。(1)狂犬病ワクチン接種ボランティアのリンパ球を用いて、EBVトランスフォーメーション法により5,152クローンの中から迅速フォーカス抑制法によるウイルス中和試験で、2種類のヒト型抗狂犬病モノクロナル抗体が樹立された。1種類(No.254)はIgG3で、他方(4-D4)はIgMであった。いずれの抗体もCHO細胞を用いた大量培養系での回収が可能であり、狂犬病ウイルス実験室株(CVS,ERA,HEP株)を位in vitroで効果的に中和することができた。現在、これらが認識するウイルス表面G蛋白のエピトープマッピングを行っている。これらの抗体は将来、現在世界的に供給が不足している狂犬病曝露後治療に用いるグロブリン製剤としての利用が期待される。今後、感染モデル動物を用いてin vivoでの効果を評価し、ヒトへの臨床応用に向けた展開を行っていく。(2)狂犬病侵淫地での媒介動物(主にイヌ)の実験室診断をより迅速に行うために、イムノクロマト法を用いた2種類(1型と2型)の抗原迅速診断アッセイキットの開発を行った。1型は同一のモノクロナル抗体を用いた金コロイド標識による抗原検出系で、脳乳剤中のウイルス抗原を鋭敏度95.5%、特異度92.8%で検出できた。一方、2型キットでは鋭敏度93.2%、特異度100%の検出力であった。このキットにより安価、短時間(15分)で狂犬病の診断をフィールドで行うことが可能になり、狂犬病の侵淫状況の調査に多大な貢献をすることが期待される。(3)アジアにおける狂犬病曝露後治療の現状について、バンコクのタイ赤十字協会とともに、作成されたヒト型抗体製剤の臨床応用に向けた基盤整備(需要の推計、生産体制の確保など)について検討を行った。今後アジアにおける狂犬病研究。予防・治療の先進国であるタイと連携を深めながらヒト型抗体の臨床応用に向けた取り組みを進める。
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