研究概要 |
昨年度に狂犬病ワクチン接種ボランティアのリンパ球を用いて、EBVトランスフォーメーション法により樹立された、2種類のヒト型抗狂犬病モノクローナル抗体の性状解析が行われた。No.254抗体(サブクラスIgG3)は、狂犬病ウイルスCVS株に対する中和能力はして47.54IU/ml(79.3IU/mg),IgG1に変換したものは108.23IU/ml(54.1IU/mg)の中和能力を有した。もう一方のNo.4-D4抗体(IgM)の中和能力は0.5IU/mlであった。またこれらの抗体は狂犬病ウイルスERA株(弱毒株),HEP-Flury株、西ヶ原株(強毒株)、1088株(野外株)を効果的に中和することができた。両抗体の認識する狂犬病ウイルスG蛋白のエピトープは、No.254抗体ではサイトIIに,また4D4抗体はサイトIとサイトIVの間に位置していた。CVS株(100FFU/wellの感染力のウイルス)に対する50%FRを示す濃度は,No.254抗体では0.32ug/ml,No.4D4抗体では15.05ng/mlであった。マウス感染阻止試験では,CVS脳乳剤のみを脳内接種した群は,接種6日後から生存率が下がり,接種11日目には全滅した。一方,No.254抗体1IUとCVSの混合液を接種した群では,接種14日目を過ぎても,生存率50%を維持した。これらの結果からNo.254(IgG1)はin vitroとin vivoのどちらにおいても,狂犬病ウイルスに対して十分な中和活性があることが示された。しかし,No 4D4については,in vitroではその活性が確認されたものの,in vivoにおいては,その活性が反映されなかった。この結果については,250LD_<50>のウイルス力値を十分中和できるNo.4D4の抗体濃度を確保することが今後の課題である。来年度はさらに新たな中和エピトープを認識する複数の種類のモノクローナル抗体を確立し、これまでのものとカクテル化することでヒトのグロブリン製剤に匹敵する中和活性を有する抗体製剤の作成を目指す。
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