研究概要 |
【概要】医療における作業設計および環境整備の不備による事故,作業関連健康障害が多発している現状から,その防止に緊要なリスク評価手法と残存リスク低減策を確立していくための学術研究基盤整備を日本・タイの国際協力を通じて促進することを目的に本研究を行なった。平成19年度はアジア地域内の医療従事者に典型的にみられる作業関連障害および健康障害の発生要因に注目し,日本とタイの医療現場での現地調査をもとに,発生要因と有効対策の解明に取り組んだ。具体的には,2007年5月にマヒドン大学労働安全衛生学教室の共同研究者と共に,医療従事者の安全衛生に関する文献調査,タイのサラブリ県の公立病院等においてヒアリング調査およびHospital Accreditation(病院認証)に関する二次資料等の収集調査を行った。また,医療従事者の安全保健アジア地域ワークショップを開催し,作業関連疾病サーベイランス体制整備(針刺し切創調査),チェックリスト開発のための良好事例収集およびその分類を行った。 2007年10月には民間病院(福岡県)における参加型職場環境改善プログラムに日泰共同研究者が参加し,日泰共通の医療従事者の労働安全衛生上のリスク,健康障害やその予防策について,医療機関における労働の特性を踏まえた改善提案手法について整理した。【結果】タイにおいては生物学的要因による健康障害リスクを中心に効果的な予防策を模索しており,病院機能評価の一部として組織的な医療事故防止の視点から医療従事者の労働安全衛生管理が重視されていることが分かった。日本の病院調査の結果から,医療従事者のメンタルヘルス向上のために取り組まれた職場環境改善は,医療ミス防止,業務効率化,働きにくさ改善などの医療従事者の安全健康支援との同時改善で,これらの技術領域が対策指向モニタリングのためのツール開発に重要な技術領域であることが分かった。
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