研究課題
本研究の目的のためには、多様なHIV-1株を分離する必要がある。HIV-1感染者の末梢血リンパ球(PBL)からのHIV-1の分離は、非感染のPBLsとの混合培養によって行われることが通例であるが、その場合、CCR5やCXCR4をコレセプターとして使用するHIV-1が分離されやすいので、最初からFPRL1あるいはGPR1などの20種類のコレセプターを発現したNP-2/CD4細胞を、HIV-1感染者のPBLと混合培養した。出来る限り多くのHIV-1臨床材料を得るために、群馬大学医学部付属病院血液内科とタイ国チェンマイ大学医学部との間に検体提供体制を確立した。両機関を受診するHIV-1感染者のうちで合意が得られた方から末梢血液の提供を受け、PBLを分離し、用いた。CCR5を発現したNP-2/CD4細胞で最も効率よくHIV-1が分離できた。CXCR4発現細胞でもある程度分離できた。その他では、GPR1およびFPRL1を発現した細胞で低頻度ながら分離できた。HIV-1のコレセプター使用性を含めたウイルス学的性質の多くは外被糖蛋白質Envのアミノ酸配列と密接に関連するので、HIV-1の感染が検出されたNP-2/CD4/FPRL1およびNP-2/CD4/GPR1細胞からPCR法でenv遺伝子DNAを増幅し、塩基配列とアミノ酸配列を決定して、コレセプター使用責任配列を解析した。21年度においては、以上のようにHIV-1臨床株を集中的に分離収集するとともに、その分離効率、臨床検査情報、Env蛋白質アミノ酸配列などのデータを蓄積できた。今後は、FPRL1やGPR1をコレセプターとして使用するHIV-1株について、そのウイルス学的性質(増殖性、細胞障害性、抗原性、細胞指向性など)を解析することで、それらの臨床的な役割を推測する。
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