研究概要 |
本研究は,論理回路モデルを始めとする種々の計算モデルに対する,計算量の評価手法の開発を目指したものである.これに対して,本年度得られた主要な成果は以下の通りである. 1.回路計算量の下限導出問題に対レて,現在最良の下界である5nを与える限定乱雑性に基づく証明手法が,既にその手法が持ち得る限界点に達していることを,実際に条件を満たす論理関数を与えることにより示した.本結果は国際会議TAMC08において発表した. 2.計算万能性が保証される量子回路基底である,クリフォード素子およびπ/8素子からなる1キユービット量子回路に対して,最簡,かつ,ユニーク性を保証する,正規形の概念を導入することに成功した.本結果は,国際会議AQIS08において発表した. 3.定数段数の論理回路モデルにおいて,多数決関数を近似する論理回路サイズを決定する問題に対して,Valiantによる確率的手法を拡張することでタイトな上界を得ることに成功した.本結果は欧州における有力会議であるICALP09において発表予定である. 4.クリーク関数を計算奇る定数段数向路のサイズに対して,既知の下界が,現在の証明手法の枠組みではタイトであることを証明した.また,最近Rossmanによって開発された下界証明手法をハイパークリーク問題等の,より広い関数に関して適用可能となるよう拡張することに成功し,これにより定数段数回路に対してロバストなDNF式を明示的に与えた.本結果は,計算量理論分野における有力会議であるCCC09において発表予定である.
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