研究概要 |
多様なデータを対象とする無ひずみデータ圧縮を基軸として,データ圧縮を多角的に把握する研究を実施した。まず,データ圧縮時にもう一つの別のデータを埋め込みながら共に無ひずみに圧縮する手法を定式化した。通常のデータ圧縮法をその特殊な場合と位置づけ,もう一方の極として,圧縮も拡張もせずに埋め込みだけを行う手法を設計した。本手法では,ユニバーサル符号として著名なLZ法の参照多重性に着目している。理論解析を行って,設計法の埋め込み容量が純粋な圧縮法の圧縮限界によって特徴づけられることを示した。続いて,整列に基づく無ひずみ圧縮のための新規な整列法を開発した。一般化Radix Permutation変換(略称,GRP変換)と名づけた本手法は,ほぼ唯一の従来法であるBurrows-Wheeler変換の真の拡張であり,パラメータの適切な選択によって,複数の派生法を導出することができる,意義のある手法である。また,本変換に組み合わせることのできる実際的な符号化の開発も行い,それらを組み合わせた圧縮実験を実施した。その結果,データの種類に応じたパラメータを利用することで,圧縮性能が向上することが判明した。さらに,Burrows-Wheeler変換を単なる変換法から固有のデータ圧縮法に解釈しなおす手法のいくつかの性質の証明を行った。最後に,以上の成果のまとめとして,データ圧縮とデータ埋め込みの双対的な関係,および,その差分データ圧縮への応用について研究の総括を行い,今後の課題を整理した。
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