研究概要 |
最大クリークを抽出するアルゴリズムに対する理論計算量評価の一層の進展を図る過程において,これまでの解析法を大幅に単純化する見通しを付けることが出来た.その具体的成果として,与えられたグラフの最大次数が定数あるいは節点数の多項式オーダーである場合には,最大クリーク問題を多項式時間で解くことができる非常に単純な分枝限定アルゴリズムと,その計算量を証明する単純な解析法を与えた.これは,これまで明らかにされていなかったが,典型的なNP困難問題である最大クリーク問題を多項式時間的に可解とする極めて自然な結果であり,他のNP困難問題の多項式時間的可解条件の基本とすることができる.この結果を基として,一般グラフに対する最大クリーク抽出の新しい理論計算量評価改善の基礎を確立した. 一方,実働的に最大クリーク抽出をより高速化する一つの手法として,共有メモリ型並列計算機上において並列処理を実行する新しい手法を開発した.これにより, 8CPU計算機による実験結果として,多くの問題に対して1CPU計算機におけるよりもほぼ8倍に近い高速化を達成できることを明らかにした.更に, 32CPU共有メモリ計算機においても,ほぼCPU数比例に近い高速化が達成出来ることの基礎的な実験的確認結果も得た. 極大クリーク全列挙アルゴリズムをデータマイニングに活用する一つの結果として,企業間の関係の構造解析を行い,企業間関係の構造をより全体的な特徴から分析する新たな手法を提案し,その有効性を確認した. 組合せ最適化問題の一環として計算論的学習理論に関する問題にも取り組み,新たな結果を得た.
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