研究概要 |
1. H19年度に続き,畳込み符号のパリティ検査行列H(D)に対するエラートレリスの構造を調べた。既に,(1)ある列が因子D^jを持つ場合:因子を持つ列に対応するエラー部分系列をj時間シフトすれば,Ariel等の方法と同等の結果が導ける,(2)ある行が因子D^iを持つ場合:対応するシンドローム部分系列をi時間シフトすれば,状態数の少ないエラートレリスを用いて元のエラー系列を表現できることを示しているが,更に,(3)ある列に意図的に因子D^Lを導入することにより,状態数の少ないエラートレリスを用いて元のエラー系列を表現できる場合があることを示した。これは(1)と比較した場合,対応するエラー部分系列を"逆方向"へL時間シフトすることに相当する。 2. Tanner等が提案するLDPC畳込み符号ではH(D)の各成分がDの単項式で表現される。この事実に注目し,上記(1)〜(3)の縮退化法を繰り返し適用して,総拘束長(行次数和)の低減を試みた。その結果,対応する畳込み符号の誤り訂正能力を保存した形で,H(D)の総拘束長を大幅に低減できることを確認した。この結果は,従来想定されなかったLDPC畳込み符号の"トレリスに基づく復号"の可能性について示唆を与えている。 3. G(D)の列が単項式因子ではなく,(1+D)のような多項式因子を含む場合に対し,この因子をG(D)から掃き出すことにより,元の符号パスをより状態数の少ない符号トレリスに埋め込めることを確認した。また,縮退トレリスの状態数が真に少なくなる場合,1状態あたり複数本の生残りパスを保存すれば,従来通り最尤復号可能なことを示した。
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