曲面や多角形を単純な要素で近似する問題 (1)膜材などの建築材料の表面写真の二値化エッジ画像から亀裂部分を認識するために、エッジ点集合を単純多角形近似するアルゴリズムを開発した。後の木構造表現を得るには単純多角形近似において、適切な単純化が必要である。これについては、以前開発した単調な折れ線の単純化の手法を基礎にした。得られた単純多角形をもとに亀裂部分を木構造で単純化する方法を開発した。 (2)水平・垂直線分の辺からなる単純多角形をより少ない数の水平・垂直な辺からなる単純多角形に近似する効率のよいアルゴリズムを、既往研究のアイデアを発展させて開発した。 平面上の点集合に対する無交差グラフ列挙問題 与えられた平面上の点集合を頂点集合とする無交差グラフのうち、幾何的・組合せ的制約を満たすものをすべて列挙する効率のよいアルゴリズムを開発した。制約のない最も単純な場合の無交差静定構造グラフの列挙については、既に開発している。また、あらかじめグラフの辺として用いる辺の集合が一部与えられているという制約の下での無交差静定構造グラフも開発している。いずれも出力あたり0(n3)時間を要する。以下はこれらの成果をもとに開発を行ったものである。 (3)グラフを構造物の抽象モデルと見るときに、点はジョイントを表す。次数の大きいジョイントは実現不可能であり、次数制約は実用上不可欠である。このことより、次数制約の下での無交差静定構造グラフおよび無交差全域木の列挙問題に対する効率の良いアルゴリズムを逆探索手法に基づいて開発した。 (4)あらかじめグラフの辺として用いる辺の集合が一部与えられているという制約の下での無交差全域木の列挙問題に対する、効率のよいアルゴリズムの開発を行った。制約のない無交差木列挙問題は10年以上前に0(n3)時間アルゴリズムが開発されているが、制約付きの場合への拡張が困難である。本研究では既に開発した制約付きデローネ三角形分割を補助グラフとして用いるというアイデアを適用した。出力一つ当たりo(n3)時間のアルゴリズムを開発した。 (5)隣接する辺間の角度に関する制約の下での無交差静定構造グラフおよび無交差全域木の列挙問題に対する効率の良いアルゴリズムを開発した。構造物ではこの角度が小さすぎると実現できないし、大きすぎると不安定になるので、自然な制約である。
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