研究概要 |
代表的な有向グラフ描画法として,階層的描画を求めるSugiyamaらのアルゴリズムが知られている.この方法は,(i)グラフの非閉路化,(ii)頂点の階層割当て,(iii)各階層における頂点順序の決定,(iv)頂点位置の決定,という4段階よりなり,各段階において,ある評価基準に着目した最適化問題を考え,それを発見的手法により解いている.本研究の目的は,各段階で他の評価基準も同時に考えることなどにより,このアルゴリズムを改良すること,および頂点がラベルをもつ有向グラフについての描画アルゴリズムを設計することである.平成19年度は主に前者について研究を行い,以下の成果を得た. 1.上記の段階(i)では,従来,描画中の帰還辺の本数を減らすことのみを考えていたが,本研究では,段階(ii)での評価基準である「描画の階層数最小」も同時に考慮するアルゴリズムを提案した.計算機実験を行ったところ,提案手法は,従来の方法に比べ,帰還辺の本数を増やすことなく,最終的に得られる描画の階層数を減らすことができた. 2.上記の段階(iii)は,描画における辺の交差数ができるだけ少なくなるように頂点順序を決定するものである.このための方法については,これまで多くの研究が行われており,代表的な手法として重心法が知られていた.本研究では,重心法によって得られた頂点順序に対し,局所探索法により高速に改善を行う方法を提案した.頂点数30〜70程度のグラフを用いて計算機実験を行ったところ,提案手法は,重心法に比べ,辺の交差を約20%減らすことができた.
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