研究概要 |
前年度に引き続き,風力発電タワーならびにビル落雷時の雷電流分布・電磁界分布について,回路解析法ならびに電磁界解析法を用いて検討を加えた。我が国では,国土の特徴から外国と比して高構造物への落雷頻度が高く,シミュレーションによる雷害対策の検討は必須である。電磁界解析法はタワー等の立体構造物の形状を考慮した解が得られるが,計算時間が極めて長大となる欠点を有する。これに対して回路解析法は,構造物を直接表現することはできないが,電磁界解析法により得られた結果から導出した等価回路モデルを使用することにより,実用精度を有しかつ高速に雷サージを計算し得る。縮小モデルによる実験結果と電磁界解析結果との比較検討より,回路モデルによっても構造物雷サージ解析がなし得ることを明らかにした。 次に,鉄道き電系の架線・レールの回路モデル計算プログラムを開発し,直流特性のみならず,過渡現象をも表現し得ることを確認した。得られた定数は,き電系の電圧変動のみならず地絡などの事故シミュレーションに適用し得,安定な鉄道運行に必須のき電系設備設計に有用である。このき電系モデルを用いて,電圧変動を抑制し回生失効を抑止する電力補完装置のシミュレーションを行った。この補完装置の蓄電媒体に,電気二重層キャパシタ(EDLC)を採用したものも実用化されている。本研究では,EDLCの非線形電圧電流特性を測定し,これより汎用回路解析プログラムEMTPに導入し得るモデルを開発した。これまでに電池モデルは開発済みであるため,いかなる蓄電媒体を有する電力補完装置であっても開発したき電回路モデルと組み合わせることにより,シミュレーションが可能となった。これにより,補完装置の最適容量,最適配置など,実験では検討することが困難なパラメータが明らかになり,補完装置の実用設計に有効であると考えられる。
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