研究概要 |
ソフトウェア開発プロジェクトにおいてPSP(Personal Software Process)とEVM(Earned Value Management)を利用する具体的な手順を確立し,学生の演習に適用することでその効果を実証した.特にEVMは,プロジェクトの進行状況を把握するための評価指標として単純明快であり,プロジェクト遅延をすばやく把握し,対策を講じることが可能であることが明らかになった. 要求仕様書の品質評価指標としてIEEE標準830-1998では,8項目の指標を列挙しているが,それらを測定するのは容易ではなく,また個別に測定値を計算しても要求仕様書全体の品質が明らかになるとは限らない.そこで本研究では要求仕様書の構成に着目した.IEEE標準830-1998には,要求仕様書の標準的な構成が例示されている.そこで実際の要求仕様書について,標準的な構成に含まれている内容がすべて含まれているかどうかを調査した.その結果,不十分な要求仕様書が多いことが明らかになった.基幹業務ソフトウェアを対象とした同種の研究はすでに行われていたが,組込みソフトウェアを対象とした研究は本研究がはじめてである. 本研究で実施したその他の成果として,(1)GUIをベースとするシステムでのフォームや操作履歴に基づく要求獲得,(2)非機能要求,例外シナリオ,非正常系要求など,主たる機能要求ではない各種の要求を分析,獲得する手法,(3)プロジェクトのリスク管理の観点から,要求獲得を時期的に分散する手法,などがある.これらはいずれも要求仕様の品質向上を目指した研究であり,今後の品質評価指標の研究に繋がるものである.
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