本研究では、ワイヤレスパーソナルエリアネットワーク(WPAN)を利用して様々な情報を収集し、各端末が行う簡単な通信(処理)により環境認識を行う知的環境認識型ワイヤレスセルラネットワークについて研究している。ワイヤレスセルラネットワークは、細胞(セルラ)が生命という大規模なシステムを構築するように、多数の簡易な処理しか行えない端末が寄り集まり通信することで、一つの端末では難しい高度な処理を実現するネットワークである。 本年度の研究では、知的環境認識の新たな研究課題として実験を行ってきた「渋滞距離推定方式」への適用について、実動実験による評価を試みた。WPAN(IEEE802.15.4)端末を16台を用いた実機実験の結果、ch数とパケット交換回数という個々の端末間の単純な情報交換を利用して、環境認識型ワイヤレスセルラネットワークを実現した。 本手法を実現する際には、数百台の端末間で情報交換をする可能性もあり、近距離に存在する十数台の端末間の干渉低減が実用上の課題となる。本研究では、通常のCSMA/CAに加えて、時分割と同時に周波数分割を適用することで、パケットロスを低減し、通信(環境認識)時間の短縮を実現している。また、無線LANなどCSMA/CAが十分に機能しない他方式からの干渉の影響を抑えるために、複数回Ackを返送する方式についても実験的に有用性を確認した。 さらに、新しい知的環境認識型ワイヤレスセルラネットワークの実用化を目指し、位置推定手法を適用した猿の獣害対策システムを提案し、端末22台を用いた実動試験を行い有効性について検証した。
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