研究概要 |
本研究では,超高精細動画像信号の高圧縮可逆符号化の検討を行った。本年度は研究期間の最終年度であり,前年度に検討し明らかにした課題について解決策を図るとともに,超高精細動画像信号に対する高圧縮可逆符号化方式としてマルコフモデル符号化(MMC)を用いた方式の実現可能性を明らかにした。以下,本研究で明らかにした点について述べる。 1.膨大な計算量,処理の高速高機能化,膨大な必要メモリ空間の必要性の問題:この問題については,本研究申請者らが参画している,本学重点推進研究テーマである「次世代アプリケーションのための高性能計算機システム」における研究課題にもなっており,超並列処理,自己最適化等による解決を検討した。 2.マルコフテーブルがスパースになることによる統計量ベース符号化の問題:これは,符号化画素数に比べ,コンテキストの出現可能種類数が多いことから生じる問題であるが,超高精細動画像信号を対象にした場合には統計ベース符号化が成立する可能性が高くなることを明らかにした。さらに,同一シーンの間は,各状態の要素の集中度は大きくなることが予想され,MMCの実現可能性は静止画像の場合に比べはるかに高くなることが考えられることから,統計的性質を調査しMMCの実現可能性を明らかにした。 3.マルコフテーブルの初期設定問題と動的構成化およびエントロピー符号構成の問題:符号化の実現にあたっては,マルコフテーブルの初期設定および符号構成が大きな問題となるが,算術符号の動的適応化を検討し効率の高い符号を提案した。 上記の考えのもとに実画像について符号化シミュレーションを行い,開発した方式の性能を評価した。なお,動画像シーケンスに対する符号化シミュレーション実験は必ずしも十分とは言い難く,この研究課題について今後も,継続して研究を進めていく予定である。
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