研究概要 |
昨年度に引き続き,地表面や物体表面に落下した雨粒がはじけ散ることで生じる水はねの簡易表現モデルに関する研究を推進した.従来手法は,降雨強度と落下表面のみをパラメータとして水はねのモデルを切替えていたため,実際の水はねパターンを決定する落下地点の水のたまり具合が考慮されていなかった.本年度は,この問題を解決するため,(1)水のたまり具合を記憶する仕組みの考案,(2)水のたまり具合に対応する水はねを生じるように水はね表現モデルを改良,(3)(1),(2)が視野を移動しても効率よく実行できるようなLOD(Level Of Detail)制御方法の考案,の3点を重点的に研究した.特に(3)は,降雨の際の地表面の様子を画一的でなく表現することと計算コストはトレード・オフの関係にあると,これまでは他の研究グループも含めて考えられていたが,表現の詳細化と広域化を一定の計算コストの下で実現できることを示した点に非常に大きい意義があると考える. 水はね表現と並行して,降雨の処理を並列計算により高速化する手法およびそれぞれの手法をGPU(Graphics Processing Unit)を有効活用することで高速化する手法を検討した.テクスチャを活用するオーソドックスな手法ではあるが,中景以遠の部分の描画高速化の効果が得られたので成果を学会研究会で発表した.降雨処理全体を並列計算する点に関しては,表現効果ごとにモジュール化して分散処理する方法を考案したが,実装には至らなかった. また,前年度までに確立したGPUを有効活用する手法を応用して関連分野における主に画像処理を高速化する研究を行い,成果を論文誌や国際会議において発表した.
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