本研究では、ある地点からの目標物の見えやすさを「視認性」として数値化し、わかりやすく提示するシステムを開発する。このためには、視認性の数値化に関する検討、および、対象空間ならびに得られた視認性の双方をCG技術で効率的に可視化する技法の構築が必要である。本年度は以下の成果を得た。 1.視認対象物が存在する特定の箇所に対する視認性のみ算出・提示していた従来手法を拡張して、指定領域中の複数地点に対する視認性を算出・提示する手法を構築した。これにより、セキュリティカメラによる道路の監視等、ある領域を包括的に視認する状況に対応できる。 2.本研究は最適な視認性を得られる状況を提示するものではない。このため、監視位置の変更が視認性に与える影響を提示し、適切な位置への移動を誘導する必要がある。このため、Java3Dを用いて実装したプロトタイプシステム上で、初期位置の近傍地点の視認性を算出し、より高い視認性の地点を探索する手法を構築した。この手法では、予め設定する視認地点として不適当な領域を避けることができる。また、対話操作性を装備することにより、利便性を高めている。 3.視認性の算出・提示にあたってはその対象空間の現実に即したモデル化が必須であるが、必要なデータ収集から取り組むのは非効率的である。そこで、仮想空間上で提案手法を実装する準備として、既存の電子地図システムを多面型没入環境に移植し、かつ、必要なユーザインタフェースを整備した。また、大量となる電子地図データ(都市空間データ)の取扱い・提示を容易にするために、都市空間データの多重詳細度制御法を構築した。
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