本研究では、ある地点からの目標物の見えやすさを「視認性」として数値化し、わかりやすく提示するシステムを開発する。このため、目標物、視認主体(人間、カメラなど)、障害物の配置・材質、動き、ならびに照明状況を考慮し、コンピュータグラフィックス(CG)技術を用いて定式化する。加えて視認主体が人間の場合を想定して、医学的・心理的な要因を考慮する。最終的には、対象空間ならびに得られた視認性の双方をCG技術で効率的に可視化するシステムを開発し、実用化を目指す。具体的には、与えられた状況における視認性を、3次元空間への拡張、障害等の動き、照明の程度、映り込み・透過による間接視認、監視主体が人間の場合の医学的・心理的状況、の5点を考慮して決定(数値化)することを目指す。 平成20年度は、1.空間各所とのコントラストなどを考慮した視認性の数値化、2.医学的・心理的な要素を組み入れた視認性の数値化、3.対話的な可視化システムの構築、の3項目を中心に研究を進めた。項目1.については、対象物と周辺領域の色情報を取得・比較することで、構築モデルを修正した。この成果は、対象物自体が暗くても視認可能な状況に対応できるためには必須の要素である。項目2.については、視認主体である人間が歩行中の場合、進路方向以外にどの程度視線を向けるのか、について調査検討し、通路壁の広告・標識等がどの程度視認され得るかを表すモデルを構築し、シミュレーションによって検証した(国際会議発表済み)。この成果は、歩行者の属性によって視認の程度が異なることを表現でき、有用である。項目3については、主に立体視システムへの適用を目指して、利用者の位置・視線方向に基づくユーザーインターフェースを構築した(平成21年度国際会議採録決定)。この成果自体にも視認性の考えが含まれており、使いやすい可視化システムに有用である。
|