研究概要 |
手術シミュレータを対象とした血管の変形と出血の同時表示における高速化手法を検討するために,血管の安定的な変形モデルの再検討を行った。血管は細長く,また本数が多いために,有限要素法を用いるとリアルタイム処理が困難である。一方,質点バネモデルは高速処理可能であるが,血管を構成する3質点が同一直線上に存在すると安定的な解を得ることができない。そこで,各質点に仮想バネを挿入することにより安定的な変形処理が行える。出血処理に関しては血管からの出血を模擬するためには粒子法が最適である。しかしながら,粒子を細かくすると血液を表現するために必要な粒子数が多くなり,リアルタイム化が困難である。そこで,粒子数を減らして粒子の径を大きくする代わりに,血液粒子を包含する血液面を作成して出血の表現を行った。これらの手法を適用して,Pentium IV2.2GHzのCPU,512MBの主記憶,Nvidia GeForce4 Ti 4600のグラフィックスボードを搭載した一般的なPCで性能測定を行った結果,血管を構成する質量を20,出血を構成する粒子数を500にすればリアルタイム(30Hz)で表示可能であることが分かった。しかしながら,一般的なPCを用いた場合,血管を構成する質点の数を抑制する必要があるばかりでなく,血液粒子を包含する血液面の生成にも多大な時間を要することから,リアルタイム処理を優先する場合には,血液面の生成を行えないことが分かった。今後,これらの問題点を解決することで,本手法を様々な手術シミュレータに適用することが可能となる。
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