研究概要 |
定性空間推論の枠組みであるPLCAでは,点,線,閉路,範囲という簡単なオブジェクトを基礎とし,それらにいくつかの束縛条件を付加することで空間データを記号的に表現する.本研究はこれを発展させ,時間的変化を伴う空間データに対する扱いが可能な枠組みを構築するとともに,いくつかの拡張を行いより現実的な問題に対応できるようなシステムの実現をめざすものである.本年度は,前年度の検討や作成したプロトタイプをもとにシステムの拡張をはかった.理論面の研究やアルゴリズムの改良も継続して行った. 研究成果は以下の通りである. 1. 凹凸情報と接触パターンに基づく表現と推論 PLCAの拡張として,定性的に領域の凹凸を表現できるような表現を提案した.この表現ではPLCAの4つの基本要素に凸包の情報を加えて階層的に表現することで図形の凹凸形状をある程度細かく表現できる.2次元上の図からこの表現形式を得るためのアルゴリズムを提案し,2次元上で実現可能な図と対応する表現の満たす性質についても検討した. 2. 矩形に基づく枠組みの提案 PLCAの変形として,矩形を対象とした定性空間推論の枠組みを提案した.対象とする図形を矩形に限定することによって,表現の単純性を維持しつつ扱える情報量を増やして実世界において応用可能な枠組みを提供した.そこに可視・不可視の概念を加えた表現形式および推論機構をもつ推論システムを構築し,表現の妥当性を証明した.さらに,この推論システムをマルチウィンドウ環境におけるウィンドウの表示へ応用した応用システムを実装した.
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