研究課題
高度な冗長性をもつ人間の上肢が多数の関節の運動をどのように決めるかという問題は、体の運動制御の不良設定問題であり、ベルンシュタイン問題として知られている。本研究は、モーションキャプチャシステムを用いて人間の上肢運動のメカニズムを解明するものである。従来に提案された運動モデルは、上肢部を独立な運動構成として自由空間での随意運動を物理的に、力学的にどのように生成したかを検討したものであった。しかしながら、作業中に手先の自由度の一部が拘束されることは多く、作業を遂行するため、体の感覚器からの情報を用いて運動制御を行うことが必要である。この場合、異なる感覚器からの情報の役割と関連、そして肢体の運動制御に及ぼす影響について、従来の運動モデルによって説明できない。昨年度は運動機構冗長性に着目し、可操作度によって運動を生成した仮説に基づいて冗長マニピュレータの自由空間での運動を実現した。本年度の主な結果としては、昨年度までの研究成果を発展させ、手先拘束運動に可操作度による運動生成手法を適用した。このときアーム部分が協調的に動いたことによって指部分の可操作度を一定なレベル以上に維持したため、リンク長の短い指部分が特異姿勢に落ちにくくなり、強いロバスト性を実現した。また、上肢運動に視覚情報の影響について調べを行った。まず、Muller-Lyer錯視の刺激を与えた場合の上肢運動を測定した。このとき錯視現象が起きることだけではなく、錯視情報が上肢運動まで大きな影響を与えたことを明らかにした。さらに、運動軌道の生成に、視覚情報の濃度が低下することに連れ運動精度が徐々に落ちる結果から、視覚情報の濃度と運動軌道生成に必要な情報の取得率に何らかの関連があることを示唆し、今後の研究に有用な手係りを与えた。
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計測自動制御学会論文集 Vol. 45 No. 1
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