研究概要 |
1.6歳から94歳にわたる男女健常者それぞれ1,173名,1,196名について,連続音声(短文)中の基本周波数(話声位)と年齢との関係を横断的に(cross-sectional)分析・調査した.男性については変声期後ほとんど変化しないが,女性は年齢とともに徐々に低下することが分かった.男性では,老年期(70代,80代)において個人差が大きいという特徴が認められた.加齢に伴う女性の話声位の変化の要因の一つとして,これまで女性ホルモンとの関係が指摘されているが,閉経期における顕著な話声位の変化は認められなかった. 2.10年から18年にわたって音声を収録している男性20名,女性38名の持続母音の基本周波数と年齢との関係を,継時的に(longitudinal)分析・調査した.男性では2名(10%)が統計的に有意な低下を認めただけであるが,女性では,12名(32%)に有意な低下を認めた.このような結果は,概略,上述の横断的調査結果と一致していると言える. 3.上述の男女性58名の持続母音を分析して,加齢と声門音源波に含まれるゆらぎと喉頭雑音の量との関係を継時的な観点から調査・分析した.その結果,1)周期変動指数(PPQ, Period Perturbation Quotient)は加齢によらず比較的安定していること,2)振幅変動指数(APQ, Amplitude Perturbation Quotient)は,男女を問わず加齢とともに増加すること,3)喉頭雑音の高周波数領域における量(NNEb, Normalized Noise Energy)は加齢とともに増加すること,が明らかになった.
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