研究概要 |
昨年度に引き続き,同一話者の音声が,10年以上にわたって収録されている,喉頭に特に疾患のない健常者の音声標本から,男性20名,女性38名を抽出し,声門音源波の特徴量である平均基本周波数(ピッチ,FO)特性,ジッタ(PPQ)・シマ(APQ)特性,喉頭雑音特性(2種類の規格化雑音エネルギー,NNEa,NNEb,それぞれ全帯域(1-4.5kHz)と,高周波数帯域(1.5-4.5kHz)での規格化雑音エネルギー)を計測し,加齢とこれらの音響特徴との関係を,統計的回帰分析を行い,回帰係数の年齢有意性について考察した.その結果,FOについては,男性で2名(10%),女性で10名(26%)が加齢とともに統計的に有意に下降した(p<o.05).PPQについては,男性は全員が有意な変化を示さず,女性では2名(5%)が増加,4名(11%)が下降,APQでは男性5名(25%),女性で11名(29%)が加齢とともに有意に増大した。一方,NNEaでは加齢による変化は少ないがNNEb(1.5-4.5kHz)では,男性で7名(35%),女性で14名(37%)が増加した.まどめると,加齢に伴う女性のFOの下降傾向,APQとNNEbの男女によらない増加傾向が認められた.このような結果は従来の研究と比べて,量的・質的に信頼性の高い成果であり,国際会議及び国内学会で発表し,高い評価を得た。
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