研究概要 |
本年度は,画像の骨格成分とテクスチャ成分への高精度な分離を実現する方法の開発を行い,加算と乗算分離表現モデルの利害得失を明らかにした.また,種々なタイプの信号依存性雑音が混入したディジタルカメラ画像に対して,開発した骨格/テクスチャ分離表現手法を適用し,骨格成分とテクスチャ成分の各々の性質に適した高度な雑音除去手法の開発を行なった. 1.ディジタルカメラ用の高度な信号依存性雑音除去法の開発 Wavelet変換領域における古典的なBesov-L2型変分問題(その最適解が古典的なWavelet Shrinkage法に相当)に色差と色和のBesovノルムを導入することで新たな変分問題を構成し,これを解くことで色間相関を利用したカラー画像雑音除去のための新Wavelet Shrinkage法を導出した.導出したWavelet Shrinkage関数は,原点以外にも複数のステップを持つShrinkage関数となり,色間相関を利用した雑音除去が可能となった. 2.Wavelet Color Shrinkageを用いたTV-L1画像分解 ChambolleのProjection法を用いてカラー画像をTV-L1画像分解する場合,R, G, Bの各画像を各々独立に処理することになる.この場合,カラーエッジ周辺で色ずれを生じることがある.そこで, TV-L1非線形画像分解モデルと定義し,反復更新型の計算によって解くアルゴリズムに考案した. 3.ディジタルカメラ用のイメージプロセッシングパイプラインの開発 高ISO感度で撮像されたRAW画像データは信号依存性雑音により劣化したものとなっている.画像をデモザイクする際に, BV-GおよびBV-L1画像分解を適用し,分解成分各々に適したデモザイク法を適用することで,雑音を含む画像に対しても鮮鋭度を保ちつつ雑音を抑圧された良好なデモザイク処理が可能な方式の開発をおこなった.
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