本研究では、窓ガラスの内面と外面にきわめて小型の機械を配し、永久磁石によって引き合うことにより吸着と移動を行うロボットシステムを開発している。本年度は室内機ユニットにモータを搭載し、その動力を室外機ユニットに伝えて両機が同期して移動する機構を開発した。多極型リングマグネットを用いて磁気同期駆動を行い、動力装置を搭載しない室外機ユニットをスムーズに移動させる実験を行い、良好な結果を得た。両機の間隔が離れると著しく磁気吸着力が減衰するが、本試作機では板厚8mm程度の防犯ガラスに対応でき、実用上十分な吸着力および回転駆動力を得た。また、移動機構は傾斜させたディスクを車輪のように用いているが、これに直接にマグネットを取り付けた1号機、およびマグネットはガラス面に平行にし車輪をフリクションドライブで駆動する2号機を開発した。後者のほうが室内外のマグネットの距離を近くできるため大きな駆動力を伝達することができた。 ワイパ機構について、室内機の動力で室外機のワイパを動かし、ガラス面に付けたり離したりする機構を開発した。磁気駆動によって回転を伝え、それをカム機構によってワイパアームの上下運動に変換する構造である。スムーズさに若干の改善の余地があるものの確実な動作を実現した。 開発した上記の実験機により手動操作の窓ガラス清掃を試みた。清掃の薬剤は手動で塗布し、その後にロボットがガラス面を移動しながらワイパ掃引を試みた。その結果、ワイパの密着性に問題があり掃引後に薬剤が残るため、移動用車輪の部分に薬剤が付着し摩擦係数低下により滑落しそうになることがあった。今後はこれらの改善とともに自動清掃のシステムを開発していく予定である。
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