研究概要 |
色彩画像における黒みの深さや強さは,見た目の印象や迫力感への重要な要因と言われており、対象領域を単純に黒であると認識させるだけでなく,鑑賞者に対象の持つ零囲気や芸術的価値を伝えうる黒の再現力が求められている。色彩画像における黒みの物理的な特性は,画素のRGB値とそのディスプレイの表示可能な最低輝度に依存する。従って,RGB値およびディスプレイ輝度と黒みの視覚的認識や見た自の印象との関係を明らかにすることは,芸術的な画像においては特に重要な問題である。本研究は、色彩画像における画像工学的・測色学的な値と黒み知覚や画像全体の感性的評価の関係性を明らかにするために,以下の4つの実験を行った。 平成19年度は実験1と実験2を実施した。実験1では,観測者が黒い表面を「黒」として知覚し始めるRGB値と,観測者が同じ領域を「深みのある黒」と知覚するRGB値についで調査した、実験2では,雫SD法(Semantic Differenti method)により実験画像を主観的に評価させ因子分析を行った結果、「上質軸」「雰囲気軸」「質感軸」が抽出できた。平成20年度は実験3と実験4を実施した。実験3では,明るい周辺視野に囲まれた暗い中心視野の黒みを「明るい灰」から「深い黒」まで6段階で観測者に主観評価させ、単純な形状での黒みと中心一周辺輝度対比の関係を調査した。この実験のために製作した周辺輝度と中心輝度を独立に制御できる装置を黒みマッチングボックスと呼ぶ。実験4では国立西洋美術館所蔵の絵画10点を刺激とし、画中の黒領域の黒みと実験3で用いた黒みマッチングボックスで適宜設定した視野を被験者に提示し、強制二者選択法によりどちらがより黒いか判断させて、黒みが等しい輝度対比を調査した。
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