本研究の目的は、曖昧で不正確な情報下における多属性/多専門家意思決定問題に対する新たな評価体系フレームワークを開発し、様々な意思決定問題の解決に資することである。このフレームワークの中で、数値評価情報と主観評価情報を統合する方法を開発している。量的な属性は数値として厳密に表現されるか、あるいはインターバル数やファジィ数として曖昧に表現される。このような数値情報と、言葉による曖昧な主観評価を総合評価において統合するために、それらを統一表現に変換する合理的な方法を開発している。さらに、目標志向意思決定モデルを開発し、伝統工芸品に対する消費者の評価、消費者への商品の推薦問題への応用を試みている。 平成20年度は、日本の伝統工芸品の評価への応用により開発手法の有用性の確認と改良を重点的に実施した。消費者の製品に対する感性評価には大きな個人差があるが、本研究により開発した目標志向型意思決定分析法は個人の選好をうまく記述できる。それは、ファジィ目標志向多属性意思決定分析手法を、消費者の意志を反映できるモデルに改良したものである。特に、各消費者の潜在的な感覚的希望を引き出し個別に製品を推奨できるのが特徴である。この推奨法は特に最近のオンラインショッピングなどにおけるマーケティングに非常に有用である。20年度は提案手法を九谷焼と山中漆器に対する感性評価データに基づき実験し有効性を検証したが、さらなる改良のための追加実験の必要性を確認した。
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