研究概要 |
本研究は「音声モンタージュ」という構想を実現するための要素研究として行うものであり,聴取した音声の非言語情報・パラ言語情報の記憶内容を聴取者から取り出すための表現語体系の確立を目指している.3年間で,声質,発話様式,そして聴取者の価値観など,音声に関係する日常表現語を抽出し,音声の聴取印象の表現語の体系的な分類・記述を行うことを目的とする. 本年度は,昨年度までに行った第1段階(表現語の収集),第2段階(了解性,同義性の調査)の成果を基に,以下に示す第3段階から第4段階までの研究に着手した. 第3段階:表現語の凝縮,反意語の抽出を目的とした聴取実験 昨年度に行った予備実験を発展させ,表現語の凝縮と表現語対を求めるための本実験を行った.本実験は第2段階(了解性,同義性の調査)までで得られた122語の表現語を用いた,アンケート形式の自己評価である.多変量解析を用いた分析で,表現語を凝縮するとともに反意語の抽出を行い,表現語対リストの作成を試みた。しかし,発話様式のバリエーションは多様なため,思ったほどの凝縮は果たせなかった.これは当初から懸念されていたことで,計画通り,第3段階は本年度で打ち切り,次の研究段階に移行する. 第4段階:抽出した表現語対の妥当性を検討するための聴取実験 第3段階で表現語を思ったほど凝縮できなかったため,表現語対の妥当性を直接的に確認する実験は見送った.しかし,話者識別の観点に立った「記憶」と「表現」の関係について,さらに実験を進め,信号検出理論を用いた詳細な分析を行った,その結果,声質に関係する表現は,話者識別にほとんど影響を及ぼさないことが示された. 来年度は,この成果を表現語の凝縮に反映させ,聴取印象における記憶を法科学的な見地から検証し,「話者認識に有効な表現」を考慮に加えた表現語の分類・記述を試みたい.
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