平成20年度までに用いた、10の楽曲のうち2曲について、MIDIシステムを用いて、演奏テンポ、およびスペクトル重心を様々に変化させた演奏を合成した。ここで、スペクトル重心の変更の仕方には、演奏する楽器の組み合わせは変化させずに演奏音域を変化させる方法と、演奏音域は変化させずに演奏する楽器の音色を変更する方法の2種類を用いた。これらの音楽の印象を意味微分法によって明らかにするとともに、これらの音楽を聴かせながらスロットマシン・ゲームを行った場合の遂行成績及び印象を測定した。これらの結果を、昨年度までの10曲を用いた場合の、音楽の印象、ゲームの印象、及びゲームの遂行成績の結果と併せて、主成分分析法及び重回帰分析を持いた分析を行った結果、次のことが明らかになった。(1)演奏テンポが速くなるほど、音楽の「迫力」が高まり、ゲームに「力動感」をもたらす。(2)スペクトル重心は、音楽の「安らぎ感」およびゲームの「快適性」を大きく左右する。すなわち、スペクトル重心は高すぎても、低すぎても音楽の「安らぎ感」、ゲームの「快適性」は低下する。ただし、最適なスペクトル重心は楽曲によって異なる。このことは、演奏音域の変化でスペクトル重心を変化させた場合にも、演奏楽器の音色を変更することでスペクトル重心を変化させた場合にも共通してみられた。 以上の結果は、音楽の演奏音域を変化させたり演奏楽器を変更することによって、スロットマシン・ゲームのように集中力を必要とするタイプのゲームの遂行成績を、制御することが可能であることを意味する。
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