昨年度までは2つの楽曲について、MIDIシステムを用いて、演奏テンポ、およびスペクトル重心を様々に変化させた演奏を合成し、これらのパラメータの操作と、ゲームの印象及び遂行成績との関係を調べた。その結果、スペクトル重心の操作がゲームの成績に大きく影響を及ぼすことが分かった。そこで本年度は、スペクトル重心のみにパラメータを絞って、このパラメータの値が、ゲームの印象および遂行成績に及ぼす効果について調べた。スペクトル重心の変更の仕方には、演奏する楽器の組み合わせは変化させずに演奏音域を変化させる方法と、演奏音域は変化させずに演奏する楽器の音色を変更する方法の2種類を用いた。これらの音楽刺激を聞かせながら、被験者にスロットマシン・タイプのゲームを行わせ、ゲームの印象と、遂行成績を求める実験を行った。実験結果を主成分分析法及び重回帰分析を持いて分析した結果、ゲームの快適性を高くする音楽を聞かせた場合遂行成績が良く、快適性が低下する音楽ほど遂行成績を低下させる関係が明らかになった。別の実験で、単純な足し算の計算を行わせる内田-クレペリン検査型のゲームを用いて音楽聴取と、遂行成績との関係を調べたところ、やはり、ゲームの印象を快適にする音楽の場合、成績が高い様子が示された。ただし、スペクトル重心とゲームの快適性との関係は線形ではなく、複雑な関係を持っていることが示唆された。この複雑な関係を解きほぐす鍵を見つけるため、音楽の印象または感情的性質がどのような音楽構成パラメータとどのような定量的関係を持っているのかについても研究を行い、その成果の一部を応用したメディア・コンテンツ情報の分析システムを構成し、特許出願を行った。 以上、本研究結果から、音楽の演奏音域を変化させたり演奏楽器を変更することによって、単純で集中力を必要とするタイプのゲームの遂行成績を制御可能であるが、その方法は単純ではないことが示された。
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