研究概要 |
「音を聴くと,色が見える」という現象は「色聴(colored hearing)」と呼ばれており,心理学の分野で共感覚(synesthesia)の1つ,すなわち1つの感覚が本来独立であるはずの別の感覚を喚起する興味深い現象として知られている.本研究では,色聴現象の中でも音楽の調性に対して色を感じる現象(ハ長調-白色,ト長調-水色など)に対して注目し,脳機能イメージングを行った.音楽聴取時の色聴保持者において,色知覚部位であるV4連合領域(V4/V8/V4R)の賦活を確認し,また右下頭頂小葉・補足運動野・小脳の3つの部位からも色聴保持者特有の賦活を確認した.さらに色聴保持者と音楽能力の関係を検討するため,絶対音感保持者と非絶対音感保持者(ただし音楽経験者)に対して脳計測を行った.その結果,色聴保持者から確認された3つの部位に対応する活動は音楽能力に由来する活動部位であることが証明された.また,絶対音感保持者では色知覚部位に関連が深い舌状回からの活動がみられ,音楽能力と色聴能力は深い相関がみられるのではないかという,共感覚のメカニズムを解明する上で重要な知見を得ることができた. またメディア表現に関して,音楽(コード進行)と形容詞との相関関係を明らかにしたサウンドイメージスケール,また音楽ムードビジュアライザにおいて和音が喚起するムード(和音性評価モデル)と色彩とを対応させたインタフェースの研究を行い,共感覚的なメディア表現手法について提案した. 本研究は,音楽教育やコンテンツ制作において考慮すべき重要な知見になるととともに,テレビ・ラジオ等メディアでも多数取り上げられるなど研究成果を一般社会へ発信することができた.
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