1.本研究の基礎を成す、ファジィエントロピーを導入したファジィc平均法に基づくファジィクラスタリングと量子統計の関係について詳細に検討し、現時点での知見をまとめた。統計力学の世界とファジィクラスタリングの世界、それぞれにおける分配関数、エネルギー、自由エネルギー、分布関数、エントロピーおよび粒子数一定の制約と規格化の制約などの対応関係を明らかにした。また、ファジィクラスタリングのメカニズムが粒子系の詳細釣合のアナロジーとして理解できることを示した。さらに、確定的アニーリング法と組み合わせたファジィクラスタリングでのファジィエントロピーの意味の解釈を行った。これらの結果は、ゆらぎのような統計力学的な概念や物理量、あるいは、Tsallisエントロピーのような新たな統計力学的エントロピーのファジィクラスタリングへの導入や応用につながると期待される。 2.遺伝的アルゴリズムを個体集団間の共進化メカニズムに基づいて拡張した競合共進化アルゴリズムでは、世代を重ねるうちに特定の遺伝子が優勢となって個体の多様性が失われるフォーカシング問題が解決すべき重要な課題の1つである。そこで、1のファジィクラスタリング手法により個体をその特徴に応じたクラスタに分類し、異なるクラスタから選択した個体を親個体とすることで競合共進化における多様性の維持に成功した。これにより、本ファジィクラスタリング手法の有用性を示した。
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