研究概要 |
本研究では,多様な異種情報資源を横断的に扱うシステムにおいて,利用者の視点をシステム設計に反映させるとことにより,利用者に最適な情報アクセス手法を提供することを目的とする。本年度は,1)機関リポジトリ横断検索システムによる検索履歴共有の効果の検証,2)検索結果の重複表示を行なうWeb検索支援システムの評価,3)利用者の視線に着目した探索行動分析,4)人文学研究資料の分析によるアクセスの最適化についての検討,を行なった。 1)では他人の履歴を参照する行動が多く見られた。特に,自分が知らないテーマでは,自分の履歴よりも他人の履歴を重視する傾向がみられ,履歴共有の効果が現れた。一方,2)により,過去の検索結果との重複度合いを提示するシステムを実装し評価を行なった。その結果,通常の検索システムと比べると,検索クエリを多く人力し試行錯誤する様子が観察された。一方で,検索結果数には大きな違いは無く,効率には影響がなかった。以上から,履歴が重要な役割を果たす一方で,その適切な利用には現在のインタフェースでは不十分なことが明らかとなった。 3)では利用者の視線を計測し,探索中の視線の動きから利用者の行動を吟味した。利用者は良く知っている部分では視線が停留し,なじみのないところでは視線が複雑に動くことが観察された。最後に,4)では特に人文科学系の異種情報資源へのアクセスを検討する目的で,人文系の論文をもとに資料間の新たな関係を定義できるかどうかを検討した。その結果,6種類170個の観点を得ることができた.これらを基に人文科学系の資料アクセスシステムの構築が可能となった。
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