近年の患者の権利をめくる状況の変化は、病院関係者の認識に大きな影響を与えている。医療倫理との関連性が注目されはじめ、インフォームド・コンセントやセカンド・オピニオンとしての図書提供が、病院側の負担軽減にもつながっている。このことは、医療紛争軽減にも一助となることが考えられる。また、インターネットの急速な普及にともない、医療情報の提供形態も多様化しており、インターネットによる情報提供との関連も注目され、専門司書設置も問われ始めている。そこで、すでに1974年より4回にわたり行われてきた菊池佑による全国調査(病院患者図書館の現状)について、継続調査を7年ぶりに行うことで、病院患者図書館の現状についての情報を収集することを目的とした。また、この調査は事後の研究を発展させる上での基礎とし、予測される「図書」を中心とした治療および医療紛争減少、セカンド・オピニオン等、医療倫理に与える影響を研究する側面も含む。 平成19年度の調査では、独立行政法人福祉医療機構の病院情報データベース(http://www.wam.go.jp)から抽出した約5000病院を対象に、往復葉書による質問調査を行った。現在集計を完了しているのは、100床以上の病院(2410施設)に対する調査である。100床未満の病院については現在集計中である。 研究協力者を含めた会議を12月に行い、全体的な流れを再確認した。また、病院の視察および意見交換を東京・浜松・福島・長野・滋賀・京都・神戸・徳島にて行った。 これらの結果、極めて強い勢いで病院患者図書館が拡大しつつあることが判明したとともに、その要因としてインフォームド・コンセントの重視や患者満足度向上が存在していることが確認された。一方、公立図書館との連携や感染症に対する理解が未熟である点が課題となっていることがわかった。
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