医学分野及び図書館学分野において、新しい共同相互作用という効果が広がりつつある。これは、患者の権利をめぐる状況の変化が病院関係者の認識に影響を与え、図書館の役割として医療倫理との関連性が注目されはじめつつあることによる。インフォームド・コンセントやセカンド・オピニオンとしての図書提供が、病院側の負担軽減にもつながり、多発する医療紛争軽減の一助となることが考えられている。先進諸国では既に普及状態にあるが、日本では立ち遅れているのが現状である。インターネットの急速な普及にともない、医療情報の提供形態も多様化しており、インターネットによる情報提供との関連も注目され、専門司書設置も問われ始めている。そこで、既に1974年より行われてきた菊池菊池による全国調査について、継続調査として7年ぶりに行った。約5000病院を対象に、往復葉書による質問調査を行った。研究協力者を含めた会議を複数回行い、全体的な流れを再確認した。また、病院の視察および意見交換を東京・浜松・福島・長野・滋賀・京都・神戸・徳島の病院等で行った。その結果、極めて強い勢いで病院患者図書館が拡大しつつあることが判明したとともに、現場の声として医療従事者や患者が強い興味を示す傾向がうかがわれ、病院患者図書館の現状が解った。これらの要因としてインフォームド・コンセントの重視や患者満足度向上が存在していることが確認された。一方、公立図書館との連携や感染症に対する理解が未熟である点が課題となっていることがわかった。日本における病院患者図書館の可能性を含め今後の研究継続の必要性も示唆された。
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