携帯電話の普及に伴い大学図書館において携帯OPACの導入が進めつつある。しかし、携帯OPACは本当に使われているのだろうか。図書館にとって不可欠なサービスなのであろうか。利用者属性によって利用の特徴やニーズに差異はあるのだろうか。国内外ともに、PC版OPACの利用についての研究は数多く存在するか、携帯OPACの利用に関する研究は数少ない。本研究の目的は、大学図書館における携帯OPACの特徴を明らかにすることである。 平成19年度(初年度)は、大学図書館における携帯OPACの利用意向の解明を目的として、大阪市立大学新入生255人の利用意向を実験と質問紙調査により分析した。(a)利用意向、(b)使わない理由、(c)機能要望の3つに分けて分析した。利用者属性としては、文理と性別の観点に焦点をあてた。利用意向と関連のある主な項目は「パケット定額サービスの加入」と「システムを使いすやいと感じた度合」であった。利用意向は、初回調査では女性、追跡調査では文系が高かった。理系男性は利用意向が低かった。携帯OPACを使わない理由は、「お金がかかる」「不必要」「遅い」「使いにくい」「機能不足」の順番であった。携帯OPACへの機能要望は、「休館日案内」「予約」「貸出延長」「新着図書」「お知らせ」の順番であった。実験後の調査では女性の利用意向がやや高かったが、実験を伴わない追跡調査では文系の利用意向が高くなり、性差がなくなった。文系の利用意向が高いことは本学における図書館利用調査や他大学の事例と合致する。初回調査での女性の意向の高さや、初回から一貫した理系男性の意向の低さについては、図書館利用だけでなく、携帯電話利用やコンピュータ利用と関連があると思われる。携帯OPACを使わないと思う理由は、お金がかかることと必要性を感じないことが2大原因である。
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