研究概要 |
「笠懸公民タイムス」編集委員・編集長へのインタビューをまとめ,地域メディアの市民編集の実態と問題点を検討した。その結果,地域メディアの市民編集は,単に,メディアの質的向上に寄与するだけではないことが明らかとなった。市民編集は,編集作業を通じて,地域社会の問題状況の市民による把握と,地域社会の生活者の視点からのアジェンダセッティングによる世論喚起ともたらせいること,また,ライフヒストリー中では,編集に携わった市民個人の問題意識の先鋭化による市民活動への導入などが明らかとなった。 また,インタニューからは,「笠懸公民タイムス」の内容や編集形態が,笠懸という地域社会の変動,特に,1960年代からの都市化、桐生市のベッドタウン化に大きく影響されていることがわかった。 すなわち,地域メディア研究の視点として,単にメディア本体を研究するだけではなく,メディアの地域住民の問題意識の醸成や地域社会の人口、産業構造からの影響などが重要であることが明らかとなった。 また,「笠懸公民タイムス」と類似する公民館報を長野に調査したところ、飯田市周辺に多数存在すること、そして、それらの公民館報の前身として「時報・村報」があり,長野県内では,大正期にまで遡ることができた。いうならば,地域メディアの市民編集の源流をその時期にまで遡及できる可能性を示すもので,注目に値する。
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