研究概要 |
本研究の目的と研究実施計藤に基づいて,平成19年度は次の2つの問題に取り組んだ。 【問題】集合的判断形成論については,推論的ジレンマの発生メカニズムを理論的に解明し,ジレンマを回避することのできる集合的判断形成のための討議と投票のプロセスを概念的に設計し,その現実妥当性を検討する。 【問題2】新たなコミュニケーション・ツールとして注目されてきている地域SNSを,フリーソフトをカスタマイズしてインプリメントする。地域SNSが参加者の間での情報交換や討議を有意味にするために必要な信頼関係を生み出すための条件を解明する。 主な研究成果は次の通りである。1.推論的ジレンマを回避できる「前提ベース投票」と「結論ベース投票」を理論的かつ多角的に比較検討し,前者の方が後者よりも望ましいことを明らかにした。さらに,推論的ジレンマと深く係わる混合動機閥題の発生条件を数学的に証明した。2.「前提ベース投票」の実践的妥当性を検討するため,地方自治体における行政と市民との協働の可能性を検討した。協働によって行政と市民とが相互理解を高め,政策実効力が高まることを論証した。3.インターネットを用いてコミュニケーションを行い,その上での討論を行う方法として,プログを用いた討議の実験を行った。約50人の学生が参加し,テーマに対して意見を言い合う形でどのような方向に導かれるかを,投稿情況(回数や内容)を調査し,電子民主主義の討議やコミュニケーションの傾向を調べた。また,学部内SNSを立ち上げ,次年度以降の準備をした。4.日本全国の地域SNSの調査者および長野・前橋での地域SNSの企画運営者を招いて,地域SNSシンポジウムを一般公開で開催した。「地域SNSは一つの手段にすぎず,コミュニティ醸成のためのツールとして必須不可欠なものではないが,支援ツールとなりうる」という共通認識を得た。
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