研究概要 |
本研究の目的と研究実施計画に基づいて,平成20年度は次の【問題3】に取り組んだ。 【問題3】【問題2】の条件を満たす地域SNSの上に,【問題1】のプロセスを組み込むことにより,集合的判断形成のための2階建モデルを概念的に設計し,実際のシステムを構築する。 主な研究成果は次の通りである。 1.Wolffの基本モデルにおいて,数値例を変数に置き換え,投票行動に関する仮定をより広く分類して定式化することにより,混合動機問題の発生条件を求め,その発生確率を計算した。さらに,混合動機問題が「推論的ジレンマ」として書き換え可能であるという主張を,その定式化を用いて検証した。 2.大学SNSの活用および評価のための準備を行った。OpenPNEによるSNSの構築と,sbblogプログシステムを用いて,講義における討論や状況報告等に用いることで,活用方法等の調査を行っている。さらにプログを用いた討議の試行を継続的に行っており,さらに大規模に行うための準備を行った。 3.意思決定手続きの中で選択肢の変更が可能な集合的意思決定支援システムのプロトタイプを作成した。選択肢の変更は,その選択肢の質に対する参加者判断の変化の結果として生じる。プロトタイプシステムはSNSと連動可能であり,各SNS参加者がそれぞれ1つの意思決定用アカウントをもつ設計である。 4.市民ニーズが総論・各論の二層構造であることを踏まえ,伊勢崎21市民会議と前橋市美術館構想ワークショップの市民参加型会議をコーディネートし,集合的判断形成過程を実践的に研究した。総論については5〜7回の討議過程を経て両会議で合意を形成できた。各論については,前者では多様な問題点の指摘に止まってしまったが,後者では市当局の財政情報を共有することにより予算のかからない形での美術館計画を作成することができた。
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