研究概要 |
本研究の目的と研究実施計画に基づいて,平成21年度は次の【問題4】に取り組んだ。 【問題4】(1)構築した集合的判断形成のための2階建モデルにもとづく支援システムを開発し,実験的に評価することにより,その性能と問題点を解明する。(2)平成19年度と平成20年度に取り組んだ,集合的判断形成論における推論的ジレンマと深く関わる混合動機問題について,公私指数という新たなアイデアを導入して分析することにより,その発生条件のさらなる精緻化と発生確率を解明する。 主な研究成果は次の通りである。 1.実験用のプロトタイプシステムの中心部分を概ね完成させ,動作実験を継続的に実施している。と同時に,数理的な記法を用いてこのシステム設計を形式的に記述し,設計方法を理論的に整理した。また,このシステムの性能等を評価するための実験計画を立てた。 2.私益に一致する選択肢は何かと公益に一致する選択肢は何かという2つの判断が異なる投票者たちは,どちらの判断を選択するかについて全員が同じであるとは限らない。この事態を扱うため,私益を公益より重視する投票者の割合をあらわす「公私指数」を新たに導入し,混合動機問題が発生する必要十分条件を証明した。さらに,発生確率を計算し分布の性質を解明した。 3.政策選択における動機の公私混合を解消するためには,行政から市民へ政策をかみ砕いて説明することが必要であるとの認識のもとで,施策(公)と住民エゴ(私)の混合問題の解消策を探究するため,群馬県で年5回開催されたプラットフォーム意見交換会をコーディネートし,集合的判断形成過程を実践的に研究した。市民側は毎回定員20名がほぼ埋まる参加状況となっている。これら参加者の公私混合問題が解消したかどうかを調査するためのアンケート票を設計した。
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