研究概要 |
本研究の目的と研究実施計画に基づいて,平成22年度は次の【問題5】に取り組んだ。 【問題5】(1)これまでに取り組んだSNS内の集団的意思決定の問題について検討を重ね,集合的判断形成過程の実践的研究を新たな事例でさらに展開する。(2)これまでの研究成果を踏まえて,電子民主主義の集合的判断形成モデルを構築する。 主な研究成果は次の通りである。 1.討論の収斂プロセスで匿名性保証を用いるGDSSの展開可能性を検討した。特に電子民主主義研究の一技法と位置づけて問題検討を行い,参加者の相互作用を支援する観点から2つの拡張技法を提案した。 2.社会的選択理論における匿名性概念の位置づけを確認する過程で,抽象性概念についても新たな知見を得て,発表に至った。 3.前橋市の赤城山観光振興という抽象的な政策と,それに関わる住民にとって身近な具体的な事業とを結びつけるべく,前橋市主催の赤城山振興ワークショップ(WS)をコーディネートし、集合的判断形成過程を実践的に研究した。参加者の意識は自分が経営する旅館の営業に意識が向いていたが,WSの回を重ねるにつれ地域全体への問題にも意識が向くようになり、最終的には観光地で観光業に携わる住民が自主的に公的事業を行うという成果を納めた。 4.推論的ジレンマの回避条件等を数学的に解明した規範的研究の成果と,政策選択における動機の公私混同を解消する方法等を構築しようとした実践的研究の成果と,集団意思決定支援システムの設計・構築・評価研究の成果とを合わせることにより、電子民主主義の集合的判断形成モデルを構築した。
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