平成21年度の調査研究において、以下のような具体的進展がみられた。 1)平成20年度までに実施した「サイバー・エスノグラフィー」調査にもとづき、理論、方法論を体系化を行った。理論的には、Postpositivism(後期実証主義)(ハイフン付のPost-positivism(ポスト実証主義)とは区別される)にもとづき、方法論的には、Mixed Methods(定性・定量融合法)にもとづく体系的な調査法としてサイバーエスノグラフィーの体系化を行い、その概略試論を文化人類学の専門論文として公刊した。 2)平成20年度までの調査研究により得た知見に基づき、サイバーエスノグラフィーの具体的な方法論的手続きが明確にとなった。そこで、平成21年度では、ケータイメール、音声通話、情報サイト(とくに、SNS、ブログといったコミュニケーションメディアとしての利用)利用に伴う欲求、不全時の心理を定性的に深め、コミュニケーション行動とメディア、心理との関係を分析する枠組みを開拓することを意図し、10名の協力者を対象とした調査を実施した。平成22年度には、1)の理論、方法論の体系化、平成20年度までの調査データの分析と合わせ、サイバーエスノグラフィーに関する書籍を刊行する予定である。 3)平成20年度までに実施した「サイバー・エスノグラフィー」調査データを含め、これまで携わった他の調査研究も含め、"The Digital Divide as Cultural Practice : A Cognitive Anthropological Exploration of Japan as an 'Information Society'"というニューヨーク州立大学バッファロー校人類学部への学位請求論文にまとめ、2010年3月に提出。2010年6月1日付けで学位取得を認められることとなった。
|