従来将棋のような思考ゲームを情報科学的に見ると二人完全情報確定ゼロ和ゲームと捉えられる。案際に、将棋をプレーするためのコンピュータアルゴリズムは、探索空間をゲーム木で表現し、評価関数を用いて探索により次の一手を決定する研究が主流であった。 本研究では、まず人間はコンピュータのように膨大で単調な探索を行うのではなく、直観を磨き如何に読まずに、ど次の一手を決定するのかという「大局観」に基づく思考をしているということを明らかにした。ここでは、5五将棋という小路盤の将棋を題材にして、自分の持つ経験的な知識を誰でも直観的に入力できるGUIを構築し、その知識に応じて知識を再現してくれるシステムを構築した。本研究ではこのシステムをKIDS (Knowledge Intuitive Description System)と呼ぶことにして、5五将棋に適用した「55KIDSIを完成させた。 このシステムは、「ユーザの利用→評価→再設計→構築→ユーザの利用→…」のようなサイクルを何度も繰り返して、改良が加えられていった。この改良の過程を詳細に調べることで、人間が持っている直観的知識のあり方を明確化することができた。 また、これを使うユーザも「知識の記述→知識の反映→自己との違いの確認→知識の修正と記述→…」というサイクルを繰り返すことになる。このサイクルを通ることで、自己の持つ知識について自然と反芻することが可能となった。 このシステムを用いることで、ユーザはメタ認知が促されるだけでなく、新しい気づきも提供する学習環境が整えられ、これによって学習効果が期待される。
|