3次元空間で図形をイメージしそれを操作する空間認知能力は、ほとんどの科学の分野において必要とされる科学的思考の基盤となる能力であり、特に心的回転課題はこれまでに多くの研究がなされている。このような視覚入力を必要とする空間認知課題においては、課題刺激のどこをどのくらい長くどのような順序で見るかという眼球運動パターンが認知情報処理の特性(例えば方略など)を表わす重要な指標となり、それが認知処理ネットワーク(脳賦活パターン)の多様性をもたらす一つの要因と考えられる。また、心的回転課題においては、練習や経験によってperformanceが向上することが明らかにされている。 本研究では、心的回転課題を練習(training)することによりperformanceが向上するとき、事象関連fMRIと眼球運動の同時計測をすることにより、脳賦活パターンの変化を眼球運動パターンの変化とperformanceの変化という2つの行動変数を用いて検証する。心的回転課題は、performance及び脳賦活部位において個人差や性差や理系文系差が一貫して報告されており、これらのvariabilityが生ずる要因を探る手がかりになると思われる。また、これらを解明することは教育の側面や空間認知能力の向上の側面からも重要であると思われる。 平成20年度には、被験者20名による本実験を行った。各被験者は5日間に継続して毎回80課題を練習し、1回目・3回目・5回目はfMRIと眼球運動の同時計測をし、2回目・4回目は眼球運動のみの測定を行った。従って、各被験者において3回のfMRI画像データと5回の眼球運動データを取得し、現在は眼球運動データ及びfMRI画像データの分析中である。
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