人間の環境の全体構造の学習過程を解明するために、心理物理学的実験をおこなうとともに、脳磁図計測による認知脳科学的実験をおこなった。まず、さまざまな複雑さのバーチャルリアリティ迷路の映像と都市環境をシミュレーションした映像を制作し、比較的多数の被験者を対象とした心理物理学的実験をおこなって、認知脳科学的実験をおこなう被験者と適切な環境映像を選定した。これらの被験者を対象として、脳磁図計測による認知脳科学的実験を実施した。実験は、学習フェーズと想起フェーズから構成された。学習フェーズにおける脳活動をあきらかにするために、脳磁図計測システムによって、脳のそれぞれの部位におけるシータ波を同時計測した。シータ波は、前頭葉および側頭葉をふくむ脳全域からえられた。この結果は、fMRI研究における空間が海馬、側頭葉、前頭葉に分布して記憶されるという結果を確認するものである。前頭葉におけるシータ波の位相は、視覚刺激の呈示に同期していた。これらの結果は、空間情報の記憶過程において、環境に関する自己中心座標系情報と環境中心座標系情報がシータ波のコヒレンスにバインドされていることを示唆する。
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