研究概要 |
本研究では,能動性を介した物体・外界表象の特性と成立過程を明らかにすることを最終的な目標として,操作行動による視覚認知系の変容と,すでに持っている道具の認識過程における操作に関する表象を明らかにするという2つの方面からの研究及びこれらをつなげる研究を行っている. H19年度の操作行動による視覚認知系の変容についての研究においては,インターフェース装置を通した操作行動と視覚認知系の相互作用とその変容を検討するための実験を行い,う得られた結果に対してコンピュータシミュレーションによる説明を試みた.実験では,被験者にインターフェース装置(タッチパネル,3次元入力装置)を介して空間移動・物体操作を行わせ,このとき,インターフェースを介した操作を繰り返すことにより,操作対象である3次元物体の形状知覚が,インターフェースの操作→外界の変化,の関係を予測した知覚へ適応することが示された.これらの結果はベイズ推定を基に構築されたモデルによるシミュレーションにより再現された. 道具の認識過程における操作に関する表象研究においては,日常物体への到達把持運動を行う条件とパントマイムのみを行なう条件で運動学的特性を比較する実験を行った.その結果,運動スキーマの利用しやすさに影響する被験者に対する取っ手の位置によって,指間距離の最大値と運動時間に違いがみられた.このにとから,習慣化された運動を行う際には物体の部分と手のインタラクションに基づいた内部表象が働くのに対して,習慣化されていない運動についてはフィードバックによる修正が働くことが分かった.
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